2.0を支える1.0の懐の深さ

Wi-Fi-FreeSpot Directory

The Wi-Fi-FreeSpot(TM) Directory is a listing of Wi-Fi enabled locations that offer Free Wireless High Speed Internet Access. USA State-by-State listings come first with Europe and other regions of the World listed further down the page.

Downtown alliance Free Wireless internet service

The Downtown Alliance has launched a free wireless network in eight different public spaces in Lower Manhattan. You'll enjoy free wireless Internet access from your laptop or PDA. So step out and log on: surf the Web, check your e-mail, and send instant messages while relaxing in the park.

米国・東海岸へ出張してきた。帰国する機内の中でhttp://www.connexionbyboeing.com/を利用してこのエントリを書いている。決して高速な接続ではないが、メールのやりとり程度なら特に大きなストレスもなく利用できる。最近は会社の事務手続きもwebベースになりつつあり、業務上の緊急対応へのスタンバイ等を考えると、手放せなくなりつつある。

日本ではITといえばすぐ西海岸・シリコンバレーが連想されるが、東海岸にも多くのIT企業が存在する。特にワシントンDC郊外のReston地域には、スタートアップ企業から大手SIerまで、数多のIT企業が集積しており、IPOに成功した富裕層も暮らしているなど、さながら「ベイ・エリア」に似た様相が広がっている(とはいえ「過程」はかなり異なるのだが)。

出張の目的自体は業務に直接関わることなので割愛させていただくが、今年に入って3回目の訪米となった今回、改めて米国での「社会におけるITの位置づけ」を認識させられることがいくつかあった。もちろん訪問したのが大都市部ばかりなので偏りはあろうけれど、Web2.0をはじめとした「*2.0」を考える上での手がかり、簡単に触れておきたい。

数年前まで、米国の接続環境は、ブロードバンド環境の整備が進んだ日本に比べ、

  • 回線速度はダイアルアップ+α
  • 値段は日本と同等かそれより高く
  • そもそもちゃんと動かないことがよくある

と、「遅い、高い、ボロい」という代物で、米国内でも「もはや米国はインターネット先進国ではない」と揶揄されるほどであった。この背景には

  • 電話回線やCATV回線の物理的な品質が悪い
  • 電話局の局舎から終端先(利用者の自宅等)の距離が大きい
  • 分離・競争により通信キャリアが疲弊していた
  • CATVの普及により通信もCATV事業の一環として(軽視されて)位置づけられていた

などが挙げられるが、昨今になってそれぞれの課題が少しずつ解決されるようになり、ようやく接続環境が改善されてきた。都市部では現在、CATVインターネットやADSLが主流になりつつあり、接続速度も概ね1Mbps程度は確保できているようだ(それでも日本のADSLに比べ、ひどく低速で高価だが)。

一方で、市場原理に基づく接続サービスの品質向上・拡大がはかられた結果、様々な「デジタル・デバイド」が生じるようになった。こうした構図は日本も同様で、実際「ADSLが開通できない過疎地」の解消に向け行政も様々な施策を打っているが、米国の場合、地域間格差はもとより、ネット環境を使う「リテラシ」に起因する格差が重視されてきた。

この問題は、その後のPCの普及と利用環境の改善により、解消の方向に向かうように見えた。実際、相当な年配の方でも空港のカウンターで「プライスラインでチケットを買ったんだけどどうチェックインすればいい?」といったやりとりをしているのをよく見かける。しかし一方で所得格差による問題、すなわち「そもそも貧しい者はインターネットやPCを利用できない」ことがなおざりにされてきた。

こうした事態は、インターネットが広く普及した米国において、単に「使えない」というだけでなく、「社会で生活する上での重大な機会損失」となる。実際、多くの商品・サービスはweb上で予約・購入した方が安価だし、学習、就職といった社会参加に関してもweb上の方が情報は遙かに充実している。あるいは医療や介護といった「生きるためのサービス」ですらそう言えるだろう。

この状況を放置すると、負のフィードバック・ループがかかってしまう。つまり、貧しい者は機会を逸することでより貧しく、富める者は機会を多く得ることでより豊かになる、という構図だ。いくら市場原理主義とはいえ、これではその市場の前提となる社会生活やその原単位の一つであるコミュニティが崩壊し、生活どころではなくなってしまう。

そこで米国では行政や企業財団を中心に、「誰でも、どこでも、気軽に」使えるというコンセプトで、低所得者向けの接続環境の提供に着手している。たとえば図書館や役場などの公共施設で共用のPCを提供したり、公立学校にもPCを大量に導入する、といったアプローチである。

冒頭に触れた「無料のホットスポット」もその一つである。PCは手に入れたが接続環境がない、という人々に向けて、無料のホットスポットを提供するというものである。この原資には、企業からの寄付や行政の補助だけでなく、たとえば今回の私のような旅行者が「ホテルでインターネットを利用する際に支払う費用」も活用されているという。

こうした、とにかくいろいろな手段を駆使して、インターネットを利用したくでもできない人を減らしていこう、というのが最近の米国のデジタル・デバイドのトレンドのようだ。この背景には、とにかく米国社会においてインターネットをインフラとして位置づけよう、そして米国中の活動をインターネットに結びつけていこう、競争はその後だ、といった気概のようなものが感じられる。

Web2.0という概念の台頭で、さまざまな「ネット上のサービス」が日本でももてはやされるようになっている。しかしその背景として、こうした「1.0をできるだけ強固で安定したものにしていく」という意識やその実現に向けた活動がある。そしてそれこそが、米国においてWeb2.0の概念をより堅実なものにしている(その反対として、日本でのそれが些か「上滑り」を感じさせる)要因となっているのである。

無論、これらのプログラムがすべて円満に進んでいるとは限らない。実際、私が目にし耳にしたのは、都市部の事例だけだ。しかし翻って日本では、都市部であろうともこうした議論や活動がどの程度顕在化しているとは、寡聞にしてあまり聞かない。もちろん日本の場合は「携帯電話によるネットサービス」が広く普及しているのだが、果たしてそれだけでいいのだろうか?

私は必ずしも「米国礼賛」の立場でものを考えているわけではないが、現時点でのこの日米の認識の相違は、最終的にWeb2.0やそこから派生した概念がインターネット上のサービスの競争環境を規定する際に、大きな影響を与えるような気がしてならない。