2007年後半のIT業界の注目株

2007年後半のIT業界、注目株は何ですか? - CNET Japan

メタかつベタですが、「UI」と「無線端末の高速化」、それに「電池(電力消費)」が気になります。

UIは、iPhoneがユーザに与えたインパクトを、端末やアプリのベンダーがどう解釈し、チャレンジするか。比較的柔軟に対応できるWebサービス周りから、いろいろな提案や実験が世の中に登場し、アプリケーションにおけるUIの重要性に関する認識が高まるように思えます。

一方、無線端末の高速化は、イーモバイルの予想以上の健闘の継続と、今秋発売のケータイあたりからHSPA(HSDPAを含む)の標準搭載が進むことで、無線端末でもメガクラスの速度が標準になると思います。こうなると端末の処理能力がボトルネックとなるところですが、筐体の物理的な制約がある中で、何を伸ばし、何を削るのか。

さらに両者に通底する永遠の課題ですが、電力消費も改めてフォーカスされるでしょう。ちょうどノキアの電池問題が出たところですが、UIのリッチさや通信の高速化を含め、計算機資源を大食いする傾向が止まらない中で、明らかにボトルネックになっています。

ケミカルな領域ゆえにイノベーションが遅い電池の高性能化だけでなく、チップ化やOS等プラットフォームレベルでの対応等、あちこち動いている気配がします。今年の下半期から来年にかけて、何らか新しい技術トレンドが出てきてもおかしくない状況と思います。

もう2ヶ月前のコメントになってしまうので書いた当人もその趣旨を忘れかけているのだが、確かこの問いを編集者からもらった時に思ったのは、「そもそもIT業界の時間感覚が変わってきているんじゃないか」ということだった。

さらに踏み込めば、時間感覚を支配する産業の変化、つまり「IT業界の競争環境の変化」とでも言うべきだろうか。

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Googleとナベプロ

YouTube日本展開に著作権の壁、どうするGoogle? - CNET Japan

だからこそ敢えて、Google/YouTube自身や彼らの提案に乗った企業のどこかが「21世紀のナベプロ」になるには、もっと泥臭い努力が必要なのだと思います。正直、現状の彼らは、ビジネスモデルも脆弱ならロビイングも不十分です。ともすれば米国本体からの「外圧待ち」(指示待ち?)の気配すら感じられます。

技術的な特性だけで制度改定の正当性を論じるのは、もはやナイーブに過ぎると思います。多少鬱陶しい領域であることは承知の上で、ここから先のブレイクスルーは、たとえばレッシグ氏やEFFがこれまで米国で進めてきたような「泥仕合」の覚悟が必要なのだと思っています。

CNETに限らずネット上では一般に「技術が世の中を変えていく」という論調の方がウケはいい。しかし現実は、世の中に選ばれていく技術の方が少数派でもある。特にこの分野は、技術以外の要素が産業を形作ってきただけに、技術を論じるだけではまったく足りない。

そんなことを伝える飛び道具として「ナベプロ」を引っ張り出してみた。今回伝えたかったことは単純で、微妙に最適化されている既得権者から権益を奪おうというのであれば、ナベプロがかつて中曽根康弘を担ぎ出したり、彼らが今でも自民党に隠然たる影響力を有しているように、総力戦を仕掛けないとダメですよ、ということである。

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セカンドライフ

CNETで新しい企画が立ち上がった。私もお誘いいただいたので下記の通り参加してみたが、いろいろなコメントがコンパクトに読めて、当初考えていたより悪くないかんじ。

日本語版登場でどうなるSecond Life? - CNET Japan

なんとなくの印象ですが、「セカンド」というほど自分の分身になりきってないし、「ライフ」というほど現実世界の複雑さ(やおもしろさ)が投影されてもいない、という気がしています。すなわち、プロダクトがコンセプトに追いついていない状態、のような。

で、そのギャップを補って余りある魅力(たとえばデザインや希少性)でもあればまだしも、それを埋めるコスト(時間や費用)をユーザが負担するというのは、なかなか受け入れにくいものです。おそらく今後も私はやらないだろうでしょう。

セカンドライフについて、上記ではコンセプトについてあれこれ書いたが、ひとまず現状は「安めのノートPCでまともに使えるようになってから出直しておいで」というところに尽きると思う。使いたい/使いたくないという以前に、メジャーなプラットフォームでまともに動かないのでは、云々する以前の段階だろう。

ただ、セカンドライフ周辺を眺めていたら、あることに気がついた。Webブラウザ(とGoogleヘゲモニー)から逃れたがっている人たちの存在だ。

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トークイベント開催のご案内

少々告知をば。

来週火曜夜、東京・西新宿で下記の通りトークイベントを開催します。クロサカが何者なのかを多少は開陳できるのではと思っております。間際のご連絡で恐縮ですが、ご都合よろしい方はぜひご参加いただければ幸いです。

〜〜〜お知らせここから〜〜〜

■告知内容
日時:7月24日火曜 19:30スタート
会場:ATLシステム・コミュニケーションスペース
    西新宿・新宿オークタワー17階 地図
費用:200円(お茶代)


テーマ:

  • Blogと(SNSと?)キャリア開発
  • 三者三様、なにをどうやって今に至るかを振り返ってみる


出演:
 徳力基彦アジャイルメディア・ネットワーク取締役
 渡辺 聡渡辺聡事務所,某社社外取締役
 黒坂達也クロサカタツヤ事務所

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書評:インターネットは誰のものか(谷脇康彦)

インターネットは誰のものか 崩れ始めたネット世界の秩序

「著者からのコメント」
グーグル、YouTubeスカイプ。ここ10年で急速に普及したインターネットを利用したサービスは、多彩で身近になりました。しかし、ネット上を大量のデータが流れるようになるにつれ、ネット混雑が急速に進んでいます。ネット混雑が進むと、みんなの通信を処理し切れなくなって、「ブロードバンド化のせいで通信速度が遅くなる」という皮肉なことも起こりかねません。
それでは、ネット混雑解消のためのコストを誰が負担すれば公平なのか?インターネットはこれまでどおり自由に利用できるのか?本著ではインターネットの仕組み、ネット混雑が起きている原因、ネット混雑が進んだ場合の最悪のシナリオ、そしてそれに対する処方箋について、技術の知識がなくても理解しやすいように解説しました。
インターネットの最前線「ネットワークの中立性」を巡る議論の入門書として、ビジネスマン、学生の皆さんをはじめ、広くインターネット利用者の方々にお読みいただき、一緒にこの問題を考えてみてほしいと思います。インターネットはみんなのものなのですから。

このコメントにほとんどが集約されている。谷脇さん渾身の力作であり、上記の通り、ネット中立性について知りたいと思う人にとって、今のところ本書を上回る解説書はない(ちなみに谷脇さんはこの分野を扱う総務省料金サービス課事業政策課というど真ん中に在籍する人である)。

ただしそれゆえに一点だけ、私なりに考えるところがあった。もちろん異論というわけではなく、誰かが後に続いて欲しいという思いを込めて、である(お前が頑張れ、と言われかねないのだが)。

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What's up, JLG?

というわけで怒濤のエントリ更新。

http://blog.japan.cnet.com/kurosaka/a/2007/06/iphone2.html

一つはNewtonである。まだintelの手に陥ちる前のARMプロセッサを積み、手書き認識機能と優れたユーザインターフェースを備えた魅力的なPDAだった。ただ、 PDAというにはあまりに大きすぎかつ高すぎたこと、PCなど他の機器との連携が不得手だったこと、またApple自身が混乱していたこと(ジョン・スカリージャン・ルイ・ガゼーといった懐かしい名前が思い出される)で、結局頓挫してしまった。

そう、Jean Louis Gasseeジャン・ルイ・ガゼー)が最近何をやっているか、私は知りたいのだ。

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iPhoneエントリのこぼれ話

久々の更新がCNETの余談というのも恐縮だが。
http://blog.japan.cnet.com/kurosaka/a/2007/06/iphone1.html

ただ、あまのじゃくな私は、ここまで世界中の人々がiPhoneを発売前から絶賛すればするほど、「それ本当?」とつい思ってしまう。そしてコンピュータへの接触歴だけは長い(そのわりに大した技能は習得できていない)身としては、ふと心配にさせる思考や記憶が、ふつふつと湧き出してくるのである。

正直、Appleフリークの熱狂ぶりは結構コワイ。うかつなことは書けないし、憎まれ口なんぞ叩いた日には集中砲火を浴びせられかねない(と思ったら、もう一つそんなコメントがはてブについている、クワバラクワバラ…)。

じゃあ書かなきゃいいのに、というのももちろんアリなのだが、それでも書いてしまうのは、コワイモノ見たさというだけでなく、これまでの経験でAppleには何度か煮え湯を飲まされてきているからである。

というわけで、毎度ばかばかしいこぼれ話でご機嫌をうかがいます。

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