2007年後半のIT業界の注目株

2007年後半のIT業界、注目株は何ですか? - CNET Japan

メタかつベタですが、「UI」と「無線端末の高速化」、それに「電池(電力消費)」が気になります。

UIは、iPhoneがユーザに与えたインパクトを、端末やアプリのベンダーがどう解釈し、チャレンジするか。比較的柔軟に対応できるWebサービス周りから、いろいろな提案や実験が世の中に登場し、アプリケーションにおけるUIの重要性に関する認識が高まるように思えます。

一方、無線端末の高速化は、イーモバイルの予想以上の健闘の継続と、今秋発売のケータイあたりからHSPA(HSDPAを含む)の標準搭載が進むことで、無線端末でもメガクラスの速度が標準になると思います。こうなると端末の処理能力がボトルネックとなるところですが、筐体の物理的な制約がある中で、何を伸ばし、何を削るのか。

さらに両者に通底する永遠の課題ですが、電力消費も改めてフォーカスされるでしょう。ちょうどノキアの電池問題が出たところですが、UIのリッチさや通信の高速化を含め、計算機資源を大食いする傾向が止まらない中で、明らかにボトルネックになっています。

ケミカルな領域ゆえにイノベーションが遅い電池の高性能化だけでなく、チップ化やOS等プラットフォームレベルでの対応等、あちこち動いている気配がします。今年の下半期から来年にかけて、何らか新しい技術トレンドが出てきてもおかしくない状況と思います。

もう2ヶ月前のコメントになってしまうので書いた当人もその趣旨を忘れかけているのだが、確かこの問いを編集者からもらった時に思ったのは、「そもそもIT業界の時間感覚が変わってきているんじゃないか」ということだった。

さらに踏み込めば、時間感覚を支配する産業の変化、つまり「IT業界の競争環境の変化」とでも言うべきだろうか。

IT業界はドッグイヤーだと言われる。しかし実際は必ずしも犬ばかりというわけではない。セミコン業界は5-10年くらいの長期計画で設備投資や開発を行っているし、TCP/IP1984年に出来上がったことからも分かるように、通信の世界も技術の底流はそれほど激しくは動いていない。

ただサービス開発やユーザが直接利用する部分、つまりソフトウェアやインターフェースという領域では、どの分野でも強烈に速い。アプリケーション開発は言うに及ばずだし、通信にしてもアクセス回線の速度やLANの速度は劇的に向上している。

そうした中で、ここ10年くらいのIT業界がドッグイヤーと形容されるのは、そこでの競争が従前の技術開発の蓄積を元にした「サービス開発競争」だったということなのだろう。すなわち、技術の本質的部分はあまり変わらず、それを利用してどう表現するかという競争だった、ということだ。

こうした競争環境が、ここに来て少し変化しはじめたかな、と思いはじめている。地表ではなく地底のプレートが動きはじめた感覚である。というのも、やはり根幹をなす技術が少し古びてきており、そのツギハギによるオーバーヘッドがボトルネック化しはじめているように思うのだ。

文中に挙げた2つのケースは、そのボトルネックが強く目立ち始めたあたりだと思う。たとえばiPhoneの登場は、インターフェースの変革が市場を掘り起こす力があることを明らかにしたのと同時に、そもそもユーザが新たなインターフェースを渇望していることをも示唆している。また電池問題は言わずもがなで、電源がなければサービスは闇である。

おそらくこれは、2007年前半・後半という程度の区切りで説明できる問題ではない。その意味でこのコメントは自分でも「あんまりうまくないなぁ」と思っていた。ただ、そもそも半期や四半期というスパンで何かを論じられる時期ではもはやないのかもしれない、とも思っている。