Googleとナベプロ

YouTube日本展開に著作権の壁、どうするGoogle? - CNET Japan

だからこそ敢えて、Google/YouTube自身や彼らの提案に乗った企業のどこかが「21世紀のナベプロ」になるには、もっと泥臭い努力が必要なのだと思います。正直、現状の彼らは、ビジネスモデルも脆弱ならロビイングも不十分です。ともすれば米国本体からの「外圧待ち」(指示待ち?)の気配すら感じられます。

技術的な特性だけで制度改定の正当性を論じるのは、もはやナイーブに過ぎると思います。多少鬱陶しい領域であることは承知の上で、ここから先のブレイクスルーは、たとえばレッシグ氏やEFFがこれまで米国で進めてきたような「泥仕合」の覚悟が必要なのだと思っています。

CNETに限らずネット上では一般に「技術が世の中を変えていく」という論調の方がウケはいい。しかし現実は、世の中に選ばれていく技術の方が少数派でもある。特にこの分野は、技術以外の要素が産業を形作ってきただけに、技術を論じるだけではまったく足りない。

そんなことを伝える飛び道具として「ナベプロ」を引っ張り出してみた。今回伝えたかったことは単純で、微妙に最適化されている既得権者から権益を奪おうというのであれば、ナベプロがかつて中曽根康弘を担ぎ出したり、彼らが今でも自民党に隠然たる影響力を有しているように、総力戦を仕掛けないとダメですよ、ということである。

そんなのユーザ視点じゃないし、産業の話なんてつまらない、という意見が多いのは重々承知だ。しかしコンテンツビジネスの構造自体、残念ながらサプライサイドの都合で出来上がった代物で、そもそもユーザの視点に立ってはいない。敵を知るという意味で、サプライサイドの論理や行動規範は理解しておく必要がある。

その上で、本来はアーティストとユーザが主役であるはずなのに、産業構造はそうなっていない、というのが最大の問題なのである。彼らのポジションを強化するためにビジネスや技術は何ができるのかを考えるべきだ。たとえばライブ主体のビジネスモデルへのスイッチが模索されているのもその流れである。もっともこれ自体は別に新しいものではなく、「新宿コマの五木ひろし公演」と同じことなのだが。

GoogleJoostの連中はそういうことを真剣に考えている。そしてそれに伴い、技術開発だけではなくビジネス開発を、そしてそれもスマートなことだけでなく泥臭い作業(ロビイングやコンテンツホルダーとの交渉)を、地道に続けている。何かを変えたいというのであれば、「オトナの話し方」を含め、そういうアプローチがそろそろ必要だろう。

…と書いたのは、実はそういう動きが日本でもいよいよ組織化されつつある、という話を少し前に耳にしたから。なかなか心強いし、できることがあれば協力したいとも思っている。

※ちなみにナベプロに関する参考図書はこのあたり。
・ポピュラー音楽は誰が作るのか―音楽産業の政治学
・ナベプロ帝国の興亡
・芸能王国渡辺プロの真実。―渡辺晋との軌跡