ベイエリアの牡丹灯籠

気配は以前から感じていたが、この記事を読んで確信を深めた。

アップル、次期Mac OS Xリリースを10月に--原因はiPhone開発 - CNET Japan

Appleは米国時間4月12日の株式市場終了後、プレスリリースでスケジュールの遅れを発表した。iPhoneのリリースは現在予定通りで6月となっているが、iPhoneのリリース時期を守るため、Leopard開発者や品質管理スタッフのプロジェクト変更が必要だった、と同社では説明している。ちなみに、同社では、6月に「Worldwide Developers ConferenceWWDC)」の開催を予定している。

やはり、Appleは悩ましい状況に陥りつつある。詳細は整理した上でCNET Blogでも書くつもりだが、総合すると「手詰まり感」に満ちあふれている。これは早期に大量レイオフコースに進むような気がする。

ところで労働市場問題という意味では、Googleも大量離職の懸念を抱えている。

4年目のジレンマ--グーグルに大量離職の危機 - CNET Japan

Googleはここ数年、急激に従業員数を増やしてきた。しかし、IPO(新規株式公開)前にストックオプションを取得した大勢の百万長者たちが8月に同社を一斉に去る可能性がある。Googleの社内規則では、従業員は入社1年後からIPO前のストックオプションを段階的に受け取り、入社4年後に全てのオプションを受け取る。そして、4カ月後に数百人の従業員がその入社4年目を迎えるのだ。

ベイエリア一帯のスナップショットとして、人材デフレが起きるかもしれない。GoogleAppleクラスのパワフルなエンジニアが労働市場に大量放出されるということは、「優秀な2名を採用したから使えない5名はレイオフ」という多重玉突きが起きる可能性がある。

ある程度のスパンでどこかが吸収できれば(あるいは両者が踏みとどまってくれれば)いいのだが、底辺レベルのエンジニアについてはすでにインド・ベトナム・中国あたりの方が安くて優秀という事実がある。好景気によってゲタを履かせてもらっていたクラスのエンジニアは、厳しい事態に陥るかもしれない。

さらに筆を滑らせると、最終的にこの動きが米国の不動産バブル崩壊に拍車をかけるのではないか、と懸念している。というのも一連のサブプライム問題で米国不動産の下落や住宅着工件数が大幅減少する中、「ベイエリアは最後の砦」と見られており、しかもその根拠が「同地域住民の生業であるIT企業の状況が好調」と見られているからだ。

これをドライブさせる要因を一つ提示すると、ゲタを履かなければならないような人に限って、高値づかみで分不相応な物件に手を出している可能性がある。というのは、スーパーでの買い物には数セントのクーポンに反応するくせに高いクルマに乗りたがるように、アメリカ人は高額消費に関しては見栄を張りたがるからだ。

これは単なる差別化ゲームというだけでなく、クルマや家の構えがその人の信用力を決定する要因の一つになるからなのだが、米国内でも特に西海岸はそういう傾向が強い(東海岸ニューイングランド的価値観と言われるように質実剛健新渡戸稲造の世界である)。このあたりを直撃する隕石だとしたら、かなりのディープインパクトが生じるリスクを見ておくべきだろう。

なお、これは対岸の火事ではない。サブプライム問題には日本の金融機関もそれなりに絡んでいる。このあたりの連関は、警戒度を上げてウォッチすべきである。というか私は自分のポートフォリオ管理も含めて、厳重にウォッチする。

とにかく、一度マインドが変わったら、流れは不可逆。なきものを追いかけるのは幽霊探し。これが牡丹灯籠たる所以。