端末はすでに多様化しつつある

Sony Japan | ニュースリリース | ロケーションフリーをACCESSにライセンス

ソニー株式会社(以下ソニー)は本年4月より、株式会社ACCESS(以下ACCESS)に対して、Microsoft(R) Windows Mobile(TM) および 携帯電話向け「ロケーションフリーロケフリ)」ソフトウエアのライセンス提供を開始します。今後ACCESSによりWindows Mobile(TM)および携帯電話向け「ロケフリ」ソフトウエアが開発され、ソニーロケーションフリーベースステーション「LF-PK1」と組み合わせることで、携帯情報端末や携帯電話などでも「ロケフリ」をお楽しみいただけるようになる予定です。

ワンセグ放送の開始に伴い、マスメディアでは「ケータイによる通信と放送の融合が実現」といった論調が目立つ。確かにそういう考え方は間違ってはいないし、携帯電話が情報通信端末の中で相変わらずガリバー的存在なのは、誰しもが認めるところだろう。

ただ、一時期の「ケータイがすべてを飲み込む」といった携帯電話万能論は、このところあまり耳にしなくなった。実際、人々が持ち歩く情報端末は、数年前に比べて大きく多様化している。たとえば、iPodをぶらさげている人を見かけない日はないし、子供のみならず大人たちも、携帯ゲーム端末で「脳のトレーニング」に夢中だ。さらには一時期かげりのみえたPDA端末も、W-ZERO3のようなスマートフォンに姿を変えて、再び勢いを盛り返してきている。

iPodが成功した大きな要因は、「ビジネスの仕掛け」にあると思う。すなわち、iTunesという「ちょっと気の利いたDRMシステム」を有する音楽配信プラットフォームと、それを支えるiTMSの商品ラインナップの拡充、そしてそこでの価値を持ち出すための端末としたその「位置づけ」が、ものの見事に的中した、ということではなかろうか。

一方、携帯ゲーム端末は、「ゲーム」という行為に携帯電話端末が必ずしも最適ではなかった、というインターフェースや認知でのハンディキャップを逆手に取れたことが普及要因として大きいように思う。端的にいえば、もう少し大きくて高精細の出力インターフェース(画面)と、もう少し操作性の高い入力インターフェース(コマンドキー)が求められていた、ということだ。携帯電話でのゲームのラインナップは、比較的動作や場面展開が非連続なRPGやパズル等に偏っているように見える一因も、そのあたりにあるのではないか。

いずれにせよ、まだまだ携帯情報端末には普及拡大の余地がある、ということだろう。その意味でワンセグ放送受信端末は、携帯電話もさることながら、むしろ携帯ゲーム端末が大きな鍵を握るのではないか、と私は思っている。

たとえば、「小さく、軽く」という携帯電話のニーズと「大きく高精細な画面での視聴」というテレビ受信のニーズはトレードオフだし、ワンセグ放送で当面必要とされる双方向性は、おそらく携帯ゲーム端末がすでに有している程度のもので十分である。そう考えると、すでに普及が拡大している携帯ゲーム端末は、有利な位置にある。

案外「通信と放送の融合」は、携帯ゲーム端末によってそのサービスイメージ(の主要な一つ)が規定されていくのかもしれない。そしてそこでは、「携帯電話網」などのモバイル通信環境をも巻き込んだ新たな競争環境が生まれていくようにも思える。たとえば前述のソニーの動きは、「非携帯電話指向」をそこはかとなく感じさせるし、あるいは先日のソフトバンクによるVodafone買収もそういった方向性に進んでいく可能性は十分に考えられる。

何が「次のサービス」や「次のインフラ」のトリガーになるのか分からない。ただ、それぞれの「萌芽」は、サービス、ビジネス、技術のいずれにしても、少しずつ見え始めている。そんな、難しいけれどおもしろい時代が、やってきているようだ。