IPv6はインターネットだけのものか?(2)

 昨今ではどうしてもインターネットの動きに目を奪われがちだが、世界にはインターネットから独立したネットワークが多くある。たとえば金融機関のネットワークや固定電話や携帯電話の音声通話は、いずれも独自回線網を利用して運用されている。
 しかし、こういったネットワークでも、最近ではインターネット技術が使われてはじめている。たとえば先月号で触れた「IP電話」は、音声データのやりとりに専用回線網を利用しているが、IP電話という名が示すとおり、通信にはIP技術を採用している。またコンビニ店等の業務用システムでも、最近は専用線網の中でIP技術を使ったシステムが構築され、通信が行われているという。
 こうした中、独自回線網でのIPv6採用もすでに始まっている。たとえばNTT東西では、それ自体が巨大な独自回線網である地域IP網(フレッツ)上で、IPv6を利用した映像配信やIP電話等のサービスを提供している。同様のサービスはこれまでインターネット上でも展開されてきているが、独自回線網であるフレッツが持つ「管理されたネットワーク」ならではの安定性の上で、IPv6の機能がより活かされた形での高品質サービスが提供されている。
 このようなIPv6利用によるネットワーク利用の多様化は、IPv6がインターネット以外の領域においてもネットワークの使い方を広げる可能性を秘めた技術であることを意味している。そして、こうした可能性に、米国をはじめ世界中が注目しつつある。
 次号では、こうした各国のIPv6を巡る新しい動きを紹介する。
(情報通信ジャーナル 2005年11月号に掲載)


インターネットがすでに多様なものになってきていることは以前のエントリでも触れたとおりだ。これは何も世界的な現象ではなく、むしろ日本国内でも様々な様相を呈している。

たとえばここに記した見方以外にも、それぞれのISPが有するバックボーンの「構造」による差異もある。そしてそれは、良くいえばそれぞれが特色をもったサービスを、悪くいえばサービス水準のばらつきや相互接続性の危機を、それぞれもたらしている。そんな状況である。

日本国内に関していえば、こうした混沌とした状況は、技術だけでなくむしろ政策的要因(具体的にはNTTを巡る様々な規制)によってももたらされている。ただ、この混沌はそう長くは続かないと思われる。というのも、ISPという業態や通信の産業構造自体がすでに歪なものになりはじめており、その歪さを克服した業態や産業構造へのニーズが徐々に顕在化しつつあるからだ。

IPv6はそれを実現する大きな技術要素の一つになりうると思う。ただ、IPv6に関する仕事に携わるはしくれとして、私は決して楽観はしていない。歪ではあってもある程度の規模を有している以上、その産業構造の変革には相当な抵抗が予想されるからである。それもおそらく、「政府が巨大な需要家として登場する」という程度のインパクトでは克服しきれないほどの抵抗であろう。

これにチャレンジする方法を、実はいまチラホラと考えている。そのアイディアはまだ現実的ではないのだが、もしそれがうまくいけば、ちょっとした驚きをもって世の中に受け入れられるかもしれない。現時点では構想段階なので具体的には書けないのだが、時期が来たらそのアイディアにも触れたいと思う。

…と、年度末進行中につき"alive"的な更新になってしまいましたが、なんとかプラスアルファをひねりだしてみました。