中国政府だけが脅威なのか?

中国、漢字ベースの独自ドメインを作成--専門家はインターネットの分裂を懸念 - CNET Japan

中国が、漢字ベースの新しいドメイン名を複数作成すると発表した。

中国は独自に、「.cn」「.com」「.net」のドメイン名を中国語で使うトップレベルドメインを3つ作成した。これらのドメイン名は、中国情報産業部が現地時間3月1日に運用を開始した。

漢字ドメイン名の作成により、中国がInternet Corporation for Assigned Names and Numbers(ICANN)から完全脱退し、Domain Name System(DNS)の国際的な統一性が損なわれるのでは、との憶測が流れている。DNSドメイン名のリクエストを解決するサーバのネットワーク。

確かに、短期的には「インターネットの一意性の危機」と解釈するのが正しい。けれど、それだけに目を向けると「中国脅威論」のような話に終始するだろう。ここはもう少し踏み込んで、インターネットが「みんなのもの」だった時代の終わりのはじまり、と考えた方が、中長期的には適切な視点のように思える。


中国政府のガバナンスはおっかない?確かにそうだろう。けれどアメリカや日本の民間企業のガバナンスも同じくらいおっかないかもしれない。そして彼らはすでにVPNやトンネル技術を使って、インターネット上に「自分たちだけしか使えないネットワーク」をオーバーレイで構築しはじめている。その意味で、インターネットはすでに「不特定多数のもの」だけでなく、「特定少数のもの」という側面を備えつつある。

おそらく、IPv6はそれを加速する、あるいはそのトレンドを決定づける技術となるだろう。それはなにもIPsecが云々というだけではない。MP/MHやアドレス管理等の運用技術も含めて、である。その際の一つの鍵となるのは、MPLS関連技術ととIPv6がどこまで仲良しになれるか、というあたりだろう。今はまだそれほどでもないけれど、論理ネットワークのニーズは潜在的にはかなりある。skypeもその一つである。

そんな時代に、どんなガバナンスが必要なのか。またそんなトレンドを是とする時、そのインフラを支えるにはどんな「産業構造」が必要なのか。まだ技術は十分ではないけど、今のうちにその議論をはじめておかないと、十分になった時、どこぞに席巻されてしまうかもしれない。それは中国政府かもしれないし、あるいは特定の民間企業かもしれない。今回の一件は、そういう警告として受け取った方がいいと思う。

ちなみに、「中国政府は怖い、中国のインターネットはおかしい」と一方的に非難するのは避けるべきだ。インターネットの運用を国際政治における政争の具にするのは、それこそ彼らの思うつぼである。企業のVPN利用を認めるように、彼らのルールも理解した上で、それでも彼らのインターネットにいろいろな面から積極的に関与していくことが大事なのだと思う。