ボーダフォンとソフトバンクの行方(2)

では彼らの狙っているものが何なのか。正直に言えば分からない。そしてそれは買収を試みている彼ら自身も、まだ明確には分かっていないのではないだろうか。

ただ、一つ確信を持っていることがある。それは、おそらく彼らが、既存のリソースの経済価値と携帯電話というサービスのアフォーダンス(音声通話、メール等)が確実なうちに、そのリソースに依存しないビジネスモデルを作る方向へ動き出す、ということだ。

たとえば彼らは、今回の買収によって、多くの携帯電話利用者の個人情報を得る。拡大解釈すれば、ネットとリアルの接点を得る、ということだ。そこで彼らは、これまでの日本ではややマイノリティだった「非ネット空間での自己の存在を明らかにしたネットサービス」を打ち出してくるだろう。これが実現すると、コミュニティビジネスでの運用リスクが大きく改善されるので、実は事業者にとっては事業コスト削減につながる。

あるいは、携帯電話というサービスのアフォーダンスが確実なうちに、携帯電話のビジネスモデルを壊しにかかるかもしれない。それはたとえばベンダやユーザと携帯電話キャリアの関係を壊しにかかるだろう。それによって彼らは事業リスクをヘッジすることができ、事業コスト(たとえばベンダのプロモーション費の肩代わり)を軽減でき、キャッシュフローをより大きく生み出せる。

おそらくそこで注目される技術は、下位層はWiFi/WiMAX、真ん中はオーバーレイネットワーク(論理ネットワーク)、上位層はセッション管理(SIP?)、DRM、RF-ID/ICカード、といったあたりだろう。つまり、格安携帯電話+アテンションを実現するユニット。これがあれば、ビジネスモデル次第で、今の価格帯と同じ端末やサービスで、既存のビジネスモデルを壊すことができる。

そこまで考えた上で、そんな時代の競争環境は一体どんなものか?そしてそこではどのような戦術が効くのか。分からないことだらけだが、一つは「水平分業」のモデルが効くだろう、というより効かせる方向へ進むのだろう。でないと既存のキャリアの「垂直統合」に依存する方々と戦えない。それに上記の技術コンポーネントでは、技術的にも事業的にも、水平分業しか実現できない。

さて、ここまでちゃんとシナリオが進むのか。そこに至るための要因をもう少し整理する必要があろう。いずれにせよ、なかなか楽しみな動きである。